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!!特別企画!!連載コラム『別の銀河系から』

第二回『After the Carnival。。。
情緒のモザイクまたは、メメント・モリ。。。。。』(戯曲評)

ナカムラアリ(版画家・造形作家・詩人)



単純な「生と死」の繰り返しを月側(太陽と対極の死としての意味で)からだけフォーカスした特異な作品である。手をかえ、品をかえ繰り返す問いかけ・・・様々な普通ではないくくりの人々の交差、中心はSFタッチで流す妙。2重の場面や重複する配役。そして、代々悩まれ続けた死へのテーマが実は単純で子供っぽい「好奇心」でも現されることを示唆する。

果たして情緒モザイクのピースは、合うのだろうか。そんな不安を抱きつつ、ピースをしっかりと合わせようとする自分に驚いた。
劇作であるがため、端々細々と状況の説明や音も含めて流れる空気まで指示してあるが、それは演出も手がける日疋自身の不条理とも思われる「死」へのこだわりなのかもしれない。

事象には必ず裏と表、光と影がある訳だが、影の部分のみのハーフトーンで組み立ててしまったこの物語は、奇異を通り越して清浄ですらある。不思議なのは、夢の中の会話のような月と男の場面も、夢買いと女の場面も、カーニバルのショー部分にいたるまで、その明度と彩度の足し算のバランスが一致していることであり、これがその雰囲気を作っているのか?
私はこの上演を見てはいないが、究極のミニマムでそれらが表現できないか勝手に考えてしまった。

全体に卵膜で覆われたような、根源的セリフを隠す手法は多少歯がゆいが、最後までそれを貫いているのは、我々の夢の中を狙っているからなのだろうか。

トキオは、果たして夢に、または本当の死に届いたのだろうか。

読者を無重力な感情に持っていくような最後が印象に残った。

この作品がどんどん差し引きされて、色々な演出家の手で上演されることを願う。

ATC.gif

(C) Kazuyuki Matsumoto

関連公演:
LinkIcon『After The Carnival』

【関連リンク】
『Gallery Ari』
ナカムラアリさんの版画家・造形作家としての仕事を紹介するホームページ。
作品の美しい画像も多数載っています。
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ブログ『miss pandora(ミス・パンドラ)』
ナカムラアリさんの写真と詩文のブログ。
リズムとことばづかいが独特な詩文のほかに
版画作品の画像がさりげなく載っていることもあります。

隅々まで読むと、個展レポートや、意外な人物の「返歌」など、
奥行きのある世界がたちあがってくるかも…