Report-B3 of ぷろじぇくと☆ぷらねっとWEB SITE

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『マリ・ラウれぽうと』

#03『動く絵画だ。』

砧ラボ(ライター)



神楽坂に「五十番」という中華惣菜屋がある。
さまざまな具材を詰めた中華まん(といってもガキのど頭ぐらいの大きさ!)
を売っており、とても美味だ。ぜひ一度味わっていただきたい。


摩訶不思議・不可解。何時芝居が始まったのか、何時終わるのか、
そしてこの世界には誰がいるのか。
最初は何も解らない。
それはまるで、絵画のある部分を切り取ったような。
少しずつ視点を引いていくと、
そこはエッシャーの『騙し絵』のように不条理な世界。
その中で、時間も空間も出鱈目につながれた、まるで間違えたパズルのような世界で、 トキオと6人の女が漂う。二人の男が時間に追われたようにパズルを組み替える。
組みあがったパズルから見えるのはトキオの過去か、それとも未来か。

観劇記を依頼されて、ストーリーが全然思い出せないことに気づいたので本を借りた。
テキストデータの打ち出しで60枚弱の台本を読んで、私はさらに解らなくなった。
日疋士郎という人はトキオに何を見せたかったのか。6人の女に何を云わせたかったのか。

私は果たして、本当にあの場所に居たのか?

根無し草のような人生の中で、何人か芝居をやっている人間と知り合った。
ジャンルもポジションもいろいろだったが、『熱い奴』ばっかりだった。芝居も熱かった。
舞台から発せられる圧倒的なパワーを感じながら、メッセージを探し出すのが常だった。
情景だけを切り取ってつなぎ合わせた、冷めた芝居に出くわしたのは初めてだ。

これは芝居じゃない。舞台を使っているがとても映画的だ。
これは映画でもない。時間が止まっているからだ。
これは...絵画だ。
動く絵画だ。
私は個展を観に来ていたんだ。


日疋氏は舞台に風景を描き出す。キャラクターを配置し、何かをしゃべらせる。
散文的で、テーマもモチーフも見えない。
だが舞台の上を追いかけても、日疋氏の意図は見えない。
日疋氏は観客に、自分のメッセージを直接ぶつけることはしないからだ。
客席の私たちは、その意図を探すために全体を俯瞰しなければならない。
場面々々を見てはいけない。全体を観る、流れに乗るのだ。
そして、舞台を含めたその空間の中に日疋氏の姿を見つけたとき、 私たちは、日疋氏の暖かい手の上で無上の時間を過ごせるだろう。

Welcome to the ....


芝居がはねて外に出たとき、日はとっくに落ちていた。
私は時間が再び動き出したのを確かめると、駅へ向かった。

GMM03.gif

(C) Kazuyuki Matsumoto